「丁半賭博」と「花札」のIR除外について

時事ネタ

4月2日の産経ニュースに次のような記事があった。少し長いが引用する。

 政府のカジノ管理委員会は2日、統合型リゾート施設(IR)の事業免許取得規則やカジノゲームの種類、依存防止対策などのIR運営の細則を盛り込んだIR整備法施行規則案を公表した。日本独自の賭博行為として導入が注目された「丁半賭博」や「花札」などは除外されたほか、カジノ内での貸付金や入場回数に厳しく制限を設けるなど依存防止対策に力点を置いた内容となった。一般からの意見募集などを経て、7月下旬までに決定する。

 規則案はカジノ行為の種類として、バカラやポーカー、ルーレットなどのテーブルゲーム9種21分類と、スロットマシンなどの電子ゲーム機によるゲーム3種類を提示。掛け金のうち払い戻される割合を示す払い戻し率も90%以上100%未満と規定した。ゲームの種類については各国のカジノの状況を踏まえて、追加することも検討するという。

 花札などが除外された理由について同委員会幹部は「違法賭博として行われてきたものなので、公正なルールが存在しない。暴力団の賭博といった反社会的な印象を与えることにもなる」と述べた。

 一方、依存防止対策については、IR整備法は、全ての国内客に週3回、月10回までの入場制限を設けているが、規則案はさらなる対策を提示。依存を自覚する本人や家族が申告すれば、カジノ事業者が1年以上にわたり入場禁止や回数制限の強化を行うことができるとした。

 ゲームにのめり込んで金銭的に追い込まれる事態を防ぐため、ATMの設置を禁止。カジノ内で貸し付けを受けることもできるが、事業者に1000万円以上の預託がある場合に限定する。クレジットカードの使用も禁止する。「スロットマシンに時刻を表示するなど、時間を忘れてのめり込んでしまうことがないようにする対策も考えたい」(同幹部)としている。

 不正行為対策については、カジノ外にいる人が実質的にカジノ行為をすることにつながることから、携帯電話などで通話しながらのカジノ行為を禁止。カジノゲームの機器についても公正性を確保するために、機器の仕様から製造、廃棄までの全てを規制の対象とする。

 事業者への免許交付に当たっては、役員や主要株主らを対象に、暴力団との関わりの有無、行政処分歴などを調べると明記。従業員の身元や社会的信用に関する調査結果も提出させる。

 IRは横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県の4地域が誘致を表明。政府は10月~来年4月に申請を受け付けた後、最大3カ所を選び、2020年代後半の開業を目指している。


 ギャンブル依存症対策、不正行為対策、事業者の身辺調査、IR誘致を表明している自治体の情報などがこの記事には書いてある。
 率直に言って、私はこの記事を読んで脱力した。というのも、カジノ管理委員会が「丁半賭博」や「花札」をカジノゲームの種類として認めるかどうかで議論しているのを知ったからである。

 そもそも、日本に設置しようとしているのはIR施設である。IRというのは、ラスベガスやシンガポール、マカオなどにあるカジノが併設された複合型リゾートである。カジノに併設して、ホテルやレストランやレジャーランド、またはMICEと呼ばれるビジネス施設があるのがIRである。それらの国、地域のIRが有名なのは、主な顧客が海外からの観光客だからである。IRは「海外からの観光客がメインターゲット」である。
 そんなIRに「丁半賭博」や「花札」の議論をしているのである。海外の観光客がメインのIRにザ・ジャパニーズ任侠賭博をカジノゲームとして導入するIR事業者がどこにいるのだろうか。私としては、カジノ管理委員会が除外するまでもなく、IR事業者が「丁半賭博」や「花札」は導入しないだろうと考えていた。
 しかし、カジノ管理委員会は「丁半賭博」や「花札」を除外した。上記の記事に書かれているように、「違法賭博として行われてきたものなので、公正なルールが存在しない。暴力団の賭博といった反社会的な印象を与えることにもなる」。その通りである。だからこそ、IR事業者は「丁半賭博」や「花札」を導入しないと私は考えたのである。IR事業者はそのような反社会的イメージがあるギャンブルを導入しないと私は考えたが、カジノ管理委員会は除外すべきと考えた。除外すべきと考えたのは、除外しないとIR事業者が「丁半賭博」や「花札」を導入するかもしれないとカジノ管理委員会が考えたからである。
 私は、反社会賭博は海外の観光客がメインのIRには似つかわしくないと考え、そんなもの除外するまでもないと考えるが、カジノ管理委員会は、そういうのも除外すべきと考えている。この認識のズレはどこに由来するのか?

 それはIRがどういう施設なのかという認識のズレに由来するものと思われる。繰り返しになるが、私はIRは海外の観光客がメインだと考えている。というのも、賭博産業は、近隣の地域で消費されるお金を自分の元に集約する産業だからである。どういうことかというと、賭博産業は、近隣の住民が支払うスーパーや飲食店、衣服店などへの衣食住に必要な生活費や、スポーツ観戦や旅行などの娯楽費などの本来なら地元経済で循環されるお金が賭博に流れることで成り立つ産業である。そのため、近隣の地元経済からしたら、本来地元で消費されるお金が別のところに流れるわけで、地元財政の悪化も予想される。そういうわけで、世界的に有名なIRは、自国住人をメインターゲットにせず、外国の観光客や「ハイローラー」と呼ばれるVIPを顧客にしている。また、自国の住人をメインにすると、ギャンブル依存症患者が増え、その患者をケアするのにコストがかかり、せっかくの税収がギャンブル依存症対策にほとんど費やされるという「無駄」なことが発生する恐れがある。そういうわけで、世界的なIRは他国民をメインにして、自国民は来れないように入場禁止にするか、入場料を設けて来にくくしようとしている。

 そもそも、賭博産業は、何も産業がない地域が地元財政の安定を確保するために合法化された経緯を持つ。ネバダ州しかり、シンガポールしかり、マカオしかりである。他にもネイティブアメリカンが運営する「インディアン・カジノ」、韓国、フィリピンもそうである。他に産業がないのでカジノを合法化し、カジノの収益の一部を税収として確保し、それを地元地域の発展に活用してきた歴史がある。地元行政の税収増加のためには、地元以外の客が来る必要がある。地元住人がカジノでお金を落としたとしても、それは本来なら地元経済に使われるお金で、カジノにお金を使う分、地元の経済は冷え込むからだ。
 ちなみに、ヨーロッパのカジノはブルジョワジー(金持ち)の暇つぶししてできたため、金を持ってる商人か、暇を持て余してる貴族が主な客という歴史があり、ヨーロッパのカジノは「社交場」としての性質を持つ。そのため、ヨーロッパのカジノには「ドレスコード」がある。
 というわけで、日本に設置するIRは世界からお客さんが来るような観光施設であり、そのなかのカジノに「丁半賭博」や「花札」を導入するのは、悪い冗談だと思っている。クリーンなイメージを押し出したいのに、やくざものが使う賭博をゲーム化してどうするんだろうと。シャツにベストを着たディーラーのそばに、畳に正座して着物から片肌を脱いだディーラーでも置くつもりなのだろうか

 それでは、カジノ管理委員会が考えるIR事業者がやくざ賭博を導入する理由は何だろうか。
 もちろん、それはそれで遊ぶ人がいるからである。それが誰かといったら、日本人である。海外の観光客が「丁半賭博」や「花札」をする可能性もあるが、そもそもルールを覚える必要がある。もしあなたが海外のカジノに行って、その国独自のカジノゲームをやってみたいと思うだろうか。ギャンブルなのだから、よく知ってるカジノゲームをやって儲けたいと思うのが普通ではないだろうか。そういうわけで、「丁半賭博」や「花札」は日本人が遊ぶのである。
 IR事業者が「丁半賭博」や「花札」を導入するのは日本人が遊ぶから、とカジノ管理委員会は考えており、それはイメージ上、反社を想像させるので除外したのである。
 私が脱力したのはここである。カジノ管理委員会がIRに来るのが日本人だと想定していることである。
 もうこの時点で、カジノ管理委員会という行政に近い団体が、日本のIRに来るのが主に日本人だろうと想定しているということは、反対に言うと、海外の観光客は日本のIRにあまり来ないと想定しているのを告白しているのに等しいのである。
 海外の観光客があまり来ないIRは、豪華な「パチンコ」店になってしまう。カジノ管理委員会はそうなることを危惧している。
 私は、日本のIRが結局「パチンコ」化すると思っている。マカオやシンガポールに豪華なIRがあるのに、どうしてわざわざ日本のIRに来るのか。来るとしたら、マカオやシンガポールのIRより魅力的なIRを設置する必要があるが、それができるだろうか。少なくとも、カジノ管理委員会は、IR事業者は「丁半賭博」や「花札」を導入すると考えている。IR事業者があまり期待されてないことはよくわかる
 日本のIRが「パチンコ」化するのか、今後に要注目である。

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